「私こう見えて実は優しいからなあ」
「うん、こう見えてってか、めちゃめちゃ優しいよ。変なところで。優しいというか、お人好しというか」
「そうか。優しいんじゃなくてお人好しか」
「しかも変なところでね。お人好しが過ぎるところがあるね」
「頼まれたら断れんし、押しに弱いしね」
「そうそう。あと自分の欲望にも弱い」
「間違いない。全体的に意志が弱い」
「私は極端な人間やからさ」
「うんうん」
「オシャレなカフェでケーキ食べたい♡みたいなときもあれば、ラーメン食って餃子食ってビール飲みたい、みたいなときもあるわけよ」
「みんなそうやろ」
「まあまあ、それで、今まではどっちにも対応できる人と付き合いたいと思ってて」
「うん」
「でもこれに限らず、両方を持ち合わせた人ってあんまりいなくて」
「そうかな」
「例えば虫出て『こわいよー』って言ってるときに、笑ってくれる人も良いし、大丈夫だよって宥めてくれる人も良いけど」
「うん」
「どちらか片方を選べば、結局ないものねだりになるというか」
「なるほど、時と場合によってはね」
「どっちか片方の性質を諦めるってことが、妥協する、完璧を求めないってことなのかと思い始めて」
「そうかもね」
「例えばラーメン餃子ビールに行ってくれる人と付き合うなら、カフェでキャッキャは友達とすればいい、とかね」
「間違いない」
「そんな感じでいこうと思ったわけよ」
「まあ、お前も本当にめんどくさい人間やなあ~」